パートナーと離婚を決意した時、付随する問題の一つが親権・養育費についてです。
パートナーの浮気が原因で離婚した場合でも、必ずあなたが親権を取れるとは限りません。
親権・養育費の問題は、浮気とは別物として考えられることがほとんどです。
今回は、離婚調停における親権・養育費についての注意点についてご紹介します。
目次
離婚調停とは?
親権・養育費問題に焦点を当て、離婚調停の注意点についてご紹介していきますが、そもそも離婚調停とはどのようなものなのでしょうか?
まずは、離婚調停について説明します。
離婚調停=話し合いの場
浮気調査後、浮気や不倫が発覚し、いざ離婚となった場合、話し合うべき問題は山積みです。
- ◇慰謝料をどうするのか?
- ◇親権はどちらが持つのか?
- ◇養育費はどうするのか?
もし、あなたとパートナーで話し合い、互いに納得して、親権や養育費をどうするのかを決めることができれば問題ありません。
しかし、金銭的な取り決めや離婚後にお子様と会う頻度など、センシティブな問題を当人同士の話し合いで全て取り決めることは、難しい場合がほとんどです。
そのような場合、家庭裁判所に申し出て、調停員の仲介のもと、話し合いを行うことになります。
これが、離婚調停です。
裁判所に申し出をしますが、調停はあくまで話し合いの延長です。
裁判のように、勝訴や敗訴があるものではなく、調停員の仲介のもと、互いの妥協点を探していくことになります。
離婚調停を行うメリット
離婚調停は、調停員という第三者が間に入ることで、互いに冷静に話し合うことができます。
当人同士の話し合いでは、浮気したパートナーへの怒りや悲しみが膨らみ、冷静に話し合うことが難しい場合があります。
感情的になってしまい、慰謝料請求額などについて、なかなか妥協できない場合も考えられます。
しかし、離婚調停を行うと、調停員が夫婦を交代で調停室に呼び、事情を聞きながら、お互いに合意できる点を探っていくように、夫婦の話し合いを手助けしてくれます。
調停では夫婦だけが直接やり取りをするわけではないので、感情的にならずに話を進めることができます。
結果、当人同士の話し合いでは、取り決めることが難しかった問題を解決することができます。
話し合い、合意した件に関しては、調停で作成される「調停調書」に記されます。
この「調停証書」に記載された事項は、裁判の判決と同等の法的効力を持つため、互いに内容を守る義務が生じます。
例えば、パートナーが決められた慰謝料の支払いが滞った場合、「調停証書」を根拠に、パートナーに対し法的に慰謝料支払いの履行を強制することができます。
離婚調停を行うには
離婚調停を起こす場合、相手方の所在地、もしくは互いに合意して決めた場所の家庭裁判所に申立を行います。
費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手のみなので、裁判に比べて簡易的に手続きを済ませることができます。
また、調停はあくまで話し合いの延長ですが、有利に調停を進めるためには弁護士への依頼を検討した方が良いでしょう。
調停で弁護士をつけることは必須ではありませんが、第三者である調停員に対して、あなた自身の主張を正確に届け、有利に調停を進めるためにサポートしてくれます。
以下の記事に、弁護士の費用や、雇うタイミングなど詳しくまとめてありますので、参考にしてください。
話し合うべき親権、養育費について
以上のようにメリットの多い離婚調停ですが、調停においては離婚や慰謝料についてでなく、離婚に付随する親権や養育費の問題も話し合うことになります。
- ●どちらが親権を持つのか?
- ●養育費をどうするのか?
- ●養育費をどのくらいの金額なのか?
など、離婚が確定するまでに協議し終えなければなりません。
親権とは?
親権とは、成人に達しない子供を保護、教育し、その財産を管理する法律上の義務・権利の総称です。
親権を与えられるのは、対象となる未成年の子供の父母であり、親権を持つ者を親権者と呼びます。
子供が成人している場合、その子供は親権から離脱することになるので、これから説明する離婚における親権問題は起き得ません。
単独親権となる場合
民法第818条第3項によると、子供の父母が婚姻中は、父母が親権を共同で行う共同親権の原則があるとされています。
しかし、子供の父母が離婚した場合、共同親権の原則の例外として、単独親権※が認められます。
(※単独親権:子供の父母の、どちらか一方のみが親権を持つ状態)
民法によると、父母が離婚をする場合、協議によって親権者を決めることが定められています。
協議が整わない場合、調停、裁判によって親権を決定することが可能です。
親権問題については、以下に詳しくまとめてありますので、参考にしてください。
養育費とは
養育費は、子供が社会的自立をするまでに必要とされる費用のことです。
親権は、子供の保護、教育をする親の権利・義務ですが、養育費は子供の権利です。
離婚によって単独親権になった場合でも、子供から見て、親権者でなくなった親と、親子でなくなるわけではありません。
未成熟な子供は親に「子供である自分が社会的自立をするため」に必要な費用を要求することが可能です。
ただし、子と請求先の親との間で認知のない場合や、親子関係がないことが証明される場合、養育費は請求できません。
例えば、子供が母親と不倫相手の間の子であり、母親が親権を持った場合かつ父親と親子関係がないことが証明された場合、子供が父親に養育費を要求する権利はなくなります。
養育費と慰謝料は別物
浮気が原因で離婚する場合、ほとんどのケースで慰謝料問題が発生します。
この慰謝料は、浮気された側の精神的ダメージに対する補償なので、子供と親、という観点で考えると、受け取るのは直接的に浮気の被害を被った親側の権利になります。
一方、養育費は、親に対し自立のための費用を求める子供側の権利です。
この観点からも、慰謝料と養育費は別物であることが分かると思います。
支給期間や金額などは決まり無し
養育費の支払い期間に明確な定めはなく、話し合いによって決められます。
大抵の場合、憲法で成人と定められる20歳まで、もしくは一般的に大学を卒業し、子供が社会に出て行く22歳まで支払われます。
また、養育費支払いは子供に属する権利なので、権利者である子供が死亡した場合、親に養育費を支払う義務は無くなります。
子供を第一に考えて
以上のように、親権は親の権利・義務、養育費は子供の権利になりますが、それらの費用の金額を話し合い、決定するのは、離婚する親同士になります。
パートナーの浮気が原因で離婚を選択することは、決して間違っていることではありませんが、子供に影響を与えることも認識しておくべきです。
そのうえで、子供にとって最も良い選択肢を考え、行動していきましょう。
そのためにも、まずは離婚調停そのものをスムーズに成立させる努力が必要です。
離婚調停全般において重視すべきこととして、浮気の証拠を掴んでおくということが挙げられます。
パートナーの浮気が原因で離婚する場合、あなたに相当な離婚原因がない限り、パートナーが「離婚原因となった有責配偶者」とみなされます。
相当な離婚原因に当たることは、例えば、あなたがパートナーに暴力を振るっていた、あなたも浮気をしていた、といったような、パートナーの浮気と同程度に離婚責任があると判断される行為のことです。
希望通りの離婚を成立させ、慰謝料を請求するためには、パートナーの離婚責任を確固たる証拠で立証することが重要です。
離婚・慰謝料に観点を当てた離婚調停などの注意点に関しては、以下にまとめてありますので、参考にしてください。
【親権問題】確実に親権を獲得するために
すでに紹介した記事にもあるように、浮気をしたにも関わらずパートナーに親権を要求されることは十分にあり得ます。
また、浮気は親権とは別問題で、考慮されないことがほとんどです。
「浮気をした上に、親権まで奪うなんて!」
と、怒りに似た感情を抱く前に、確実に親権を獲得する方法を考えましょう。
判断基準は「子供の幸せ」
親権争いの際に、最も重視されることは「子供の幸せ」です。
たとえパートナーが浮気をしたとしても、パートナーが子供を愛し、保護して、養育することが可能であり、子供の幸せに繋がると判断されれば、パートナーが親権を獲得する可能性も十分にあります。
反対に、あなたがパートナーよりも親として子供を愛しており、経済的にも十分に養育が可能であると証明することができれば、親権獲得が可能です。
調停では、何事も形ある証拠として証明しなくてはならないので、本来は形で見せることのできない愛情も目に見えるように示さなくてはなりません。
愛情を証明する何よりの証拠は、あなたの普段からの子供に対する愛情深い行動や態度です。
そうした子供に対する真摯な行動は、家族や周囲からの評判を良くし、その評判が証拠となり、調停を有利に進めることができます。
また、パートナーが親としてふさわしくない理由を証明することも、親権獲得を有利に進めるためには重要です。
パートナーの非を証明する
例えば、以下のような事情があった場合、パートナーが子供の親として不適切であると判断されます。
- 1DVなどの事実
- 2浮気相手にのめり込み、家庭を全く顧みない行動が多い
- 3経済的に、またその他の理由で養育が不可能
- 4子育てに非協力的
DVなどが離婚原因に含まれる場合、たとえ子供に手をあげていなくとも、暴力を振るう者は親にふさわしくないと判断されます。
また、浮気そのものが親権争いで考慮されないとしても、浮気に熱中するあまり、家庭を全く顧みなかった場合などは、子供の養育に影響すると判断されることがあります。
上記の事情を証拠として証明できれば、相対的にあなたが親権を獲得できる確率が上がります。
一方、浮気をしたパートナーが上記の要件に当てはまらない場合も十分に考えられます。
その場合、親権が欲しいあまりに、パートナーを貶めようとしてはなりません。
無理にパートナーの評価を落とそうとすれば、逆にあなたの人格が疑われ、評価が下がってしまう可能性があります。
あくまでも、事実は事実として、正確な証拠を持って証明できるように努めてください。
【養育費問題】確実に養育費を獲得するために
親権を獲得できたなら、次は養育費について取り決める必要があります。
「離婚したら関わりたくないから、養育費は要らない」
「どうせ養育費なんてもらえないんだから、最初から期待していない」
このような考えの方が多くいるようですが、養育費の権利を持っているのは、離婚する親ではなく子供です。
親の都合で、子供の権利を取り上げるようなことはしてはなりません。
子供が自立し、大人になっていくための費用である養育費を、しっかりとパートナーに支払ってもらえるように努力しましょう。
養育費の相場
養育費は、夫婦それぞれの年収と子供の人数によって算出され、決定されます。
支払う側の年収が高く、支払われる側の年収が低ければ、それだけ養育費は高額になります。
反対に、支払われる側の年収の方が高いようであれば、養育費は低額になりやすいと言えます。
また、子供が15歳以上であった場合、一般的に高校生~大学生の年齢の子供になるため、これまでよりも養育費用がかかると判断され、養育費が高額になります。
養育費の相場として、子供一人あたり2万円~4万円が一般的とされていますが、子供の人数が増えれば2倍、3倍と単純に高くなるわけではありません。
年収、年齢も含めて、様々な観点から家庭環境を鑑みたうえで算出されるので、詳しくは弁護士などの専門家に相談してみましょう。
養育費の計算をする簡易シミュレーターを用意しているホームページなどもあります。
また、裁判所のホームページには養育費の算定式が掲示されているので、参考になるでしょう。
養育費を絶対に諦めないこと
養育費を確実に獲得するためには、養育費に関する現状を把握する必要があります。
現在、問題になっていることは「養育費の未払い」です。
厚生労働省の発表によると、母子家庭のうち「養育費支払いを現在も受けている」と答えたのは、全体の約25%の世帯に留まっています。
父子家庭に至っては、約4.2%の世帯しか養育費を受給していないとのことです。
養育費の取り決めをしっかりとした世帯でも、約半数が養育費を受給できていない現状です。
しかし、だからと言って「仕方がない」と諦めてはいけません。
最初から「養育費はもらえない」と思わず、何があっても支払いを要求する意思を持ち続けてください。
どんな対策を講じるにしても、あなたが諦めてしまえば、どうしようもありません。
養育費の未払い問題があることは紛れもない事実で、取り決めた通りに養育費をもらい続けることは難しいことかもしれません。
そこで、覚えてもらいたいことが「離婚したパートナーに養育費を支払い続けてもらうための方法」です。
養育費の未払いを防ぐ
残念ながら、取り決めた養育費が必ず支払われ続けるとは限りません。
上記で紹介したようなデータもあれば、途中で一方的に減額されてしまうケースもあります。
これらの事態を防ぐために、離婚調停で注意すべき点をご紹介します。
調停での取り決めは強制力になりうる
養育費の支払いが調停で決められた場合、債務名義と呼ばれる文書が発行されます。
離婚調停では、既に紹介した「調停調書」のことを指し、養育費の他、慰謝料、親権についてなどが記載されています。
「調停調書」は、裁判の判決と同等の効力があり、養育費が支払われなくなった場合、この調停調書を根拠に給与の差し押さえが可能です。
話し合いで養育費が決まらない場合でも、決して諦めず、調停や裁判で養育費をもらえるように争いましょう。
また、話し合いで養育費支払いが決定した場合でも、未払いを防ぐために「離婚公正証書」などの作成は忘れずに行って下さい。
公正証書は公的文書であるため、記された内容に公的意味を持ち、未払い防止に役立ちます。
離婚調停で申立人が質問されること
結婚した経緯
申立人がなぜ、どういった経緯で結婚をしたかは、離婚調停で良く聞かれる質問です。事細かく何もかもを話さないといけないというわけではなく、ざっくりとした説明で大丈夫です。いつ、どのような場面で出会い、どのような経緯で結婚することになったのか、その後の結婚生活はどのような状態だったのかを説明すれば良いです。
離婚の決め手
申立人が離婚を決意した際に調停委員が特に聞きたい質問は、なぜ離婚をしたいと思ったのかです。なぜなら、離婚が認められるかどうかを判断する重要な材料になるからです。
答え方としては、夫(妻)とどういったことがあって離婚を決意したのか、既に夫(妻)に対して離婚を突きつけているのか、などです。もし既に離婚を申し出ている場合は、その際にどのような話し合いが行われたのかも伝えてください。
離婚をしたいと思っている限り、怒りの感情や悲しみの感情など負の感情を持っている方が多くいらっしゃいます。なので、離婚を決めた経緯を話しているうちについ感情的になってきてしまうことがありますが、調停委員には冷静に落ち着いて話すように心掛けてください。
夫婦関係の状況
また、現在の夫婦関係の状況がどのような状態かを質問されることもよくあります。例えば、現在夫婦は同居しているのか別居しているのか、別居している場合は夫(妻)から生活費をもらっているか、または夫(妻)に生活費を払っているかなどを聞かれます。離婚をしたいからといって、現在の夫婦関係の状況の嘘はつかないようにしてください。嘘を言ってしまうと、あとあと面倒くさいことになりかねないので、本当の事だけを伝えるようにしてください。
子どもに関して
子どもがいる場合には、子どもの親権はどちらが取るか、子どもとの面会は許すか、養育費はどうするのかなどを、どのようにしたいかを聞かれることもあります。子どもとの面会や養育費に関しては離婚後に話し合っても問題はないです。ですが、子どもの親権に関しては必ず離婚をする前に、どちらがとるのかを決めなければいけません。
双方が親権を取りたいと思っている場合、離婚の申立人または夫(妻)が親権を申し出た場合、どちらが子どもの面倒を見ることができるかなどの観点から決定します。
円満離婚へとつなげるために
親権、養育費の問題をスムーズに決めるためにも、大前提として相手の浮気を確実に証明して、離婚へ繋げることが重要です。
証拠もなく離婚調停を起こせば、あなたの離婚要求が却下される可能性もあります。
さらに、根拠もなく浮気を疑ったとして、あなたの人格が疑われてしまうなど、不測の事態を招く恐れさえあります。
そうなれば、たとえ離婚が認められたとしても、親としてふさわしくないと判断され、親権をパートナーに奪われてしまうことも考えられます。
そのためには、感情的にならず、冷静に話し合い、動かぬ証拠を武器に、離婚へ進んでいく必要があります。
当人同士だけでの話し合いでは、なかなか冷静になれないことが多いので、そのために第三者を仲介する調停が存在します。
調停員はあくまで中立の立場なので、どちらか一方に肩入れすることはありません。
だからこそ、客観的な視点からの情報や決定的な証拠を用意しておく必要があります。
確実に親権を獲得し、養育費を獲得するためにも、探偵事務所への依頼などを検討してみましょう。
調停中に気をつけるべきこと
その他、調停における注意点をお伝えします。
調停は、毎日開かれるわけではなく、数日おきに行われます。
自分ひとりで調停の手続きを行うと、それでなくとも時間の掛かる調停が、さらに長引いてしまう可能性があります。
あなた自身の心の負担や手間が大きくなるだけではなく、子供にとっても落ち着かない時間が増えてしまうでしょう。
無駄な議論で調停が長引かないよう、探偵事務所の調査による決定的な証拠を掴むことや調停における多くの手続きを代理で行ってくれる弁護士への依頼が重要であることを覚えておいてください。
また、離婚調停中は引き続き、書類上の夫婦であることも理解しておかなくてはなりません。
離婚調停が始まったからといって、すでに離婚が決まったものとして新たな恋人と交際を始める、などの行動は控えましょう。
さらに、もう一つ注意点を述べるとすれば、調停員も人間であることを意識しておくことが大切です。
もちろん、調停員はプロであり、いかなる時も中立の立場を取ります。
しかし、調停に奇抜な服装や髪型で出廷する、乱暴な言葉遣いで横柄な態度を取り続けるなど、常識から逸脱した行動をすれば、調停員の印象は悪くなります。
調停員があなたに悪印象を抱けば、親としてふさわしくないと判断され、パートナーが親権を持つように動くかもしれません。
世間一般的に好印象とされる行動を心がけ、あくまで常識的な行動を心がけましょう。
浮気をしたパートナーに対し、思わず怒鳴りたいときや、泣き出してしまいたいときがあるかもしれません。
しかし、どうか理性や冷静さを欠かないでください。
探偵が獲得した証拠や弁護士のサポートがあれば、不安になる必要はありません。
最後の最後で、あなたや子供に不利な状況にならないよう、良心的な行動を心がけ、新たな未来のために、その一歩を踏み出してください!